アンケートを配って、点数の集計まではやった。けれど、最後の「ご意見・ご感想」の欄に書かれた文章は、印刷したまま棚に置いてある——中小企業の現場で、非常によく見かける状態です。点数は平均を出せば形になりますが、自由記述は一件ずつ読まないと意味が分からないうえに、読んだところで「なんとなくこういう傾向かな」で終わってしまう。この記事では、Anthropic社の公式AIコーディングツール Claude Code を使って、アンケートの自由記述を集計し、改善点として取り出すまでの手順を、非エンジニアの方向けに整理します。
読む気がないから放置されるわけではありません。構造的に続かない理由が3つあります。
自由記述を読みながら「これは接客の話」「これは価格の話」と頭の中で仕分けし、同時に「じゃあどうするか」まで考えようとします。3つの作業を同時にやろうとして、途中で疲れて終わります。
「感じが良かった」「気持ちよく対応してもらえた」「スタッフさんが親切」——この3つは同じことを言っていますが、文字としては全部違います。だから数えられない。数えられないと、多い意見なのか一人の意見なのか判断がつきません。
苦労して「接客への満足が多い」とまとめても、それは分かっていたことだったりします。すでに知っていることの確認で終わると、次から誰もやらなくなります。
この3つは、いずれも判断力の問題ではなく作業の設計の問題です。だから手順を変えれば解決できます。
先に線を引いておきます。ここを曖昧にしたまま進めると、出てきた結果を信じてよいのか分からなくなります。
| 工程 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 文章の書き起こし・整形 | Claude Code | 手を動かすだけの作業 |
| 内容ごとの仕分けと件数集計 | Claude Code | 基準を渡せば揺れずに実行できる |
| 気になる記述の抜き出し | Claude Code | 見落としが起きやすい部分 |
| 何を課題と見るかの決定 | 人 | 会社の方針と資源の問題 |
| 改善策の決定と実行 | 人 | 責任が伴う判断 |
とくに4行目が要点です。「駐車場が停めにくい」が5件あったとして、それを課題として扱うかどうかは、立地や賃料や来店手段の内訳を知っている人でなければ判断できません。機械が出すのは材料であって、結論ではありません。
特別な準備は要りません。手元にアンケート用紙か回答データがあれば始められます。
紙のアンケートなら写真かスキャンで画像にします。回答フォームの結果なら書き出したファイルを使います。必ず元のデータの控えを別に残してください。 作業中に上書きしても戻せる状態にしておくのが最初の一歩です。氏名など個人が特定できる欄は、あらかじめ削っておくことをおすすめします。
ここが結果を大きく左右します。仕分けの箱を決めずに「うまくまとめて」と頼むと、Claude Codeが勝手にカテゴリをつくり、毎回違う分類になります。次の月と比べられなくなるので、箱は自分で決めます。
| 箱 | 中身の例 |
|---|---|
| 人・応対 | スタッフの態度、説明の分かりやすさ |
| 商品・サービス | 品質、種類、内容そのもの |
| 価格 | 金額、コース設定、支払い方法 |
| 場所・設備 | 駐車場、清潔さ、待合、動線 |
| 時間 | 待ち時間、営業時間、予約の取りやすさ |
どれにも入らないものは「その他」に置き、その他が全体の2割を超えたら箱を1つ足すという運用にすると、無理なく育っていきます。
「この記述はどの箱か、そう判断した理由も一緒に出してください」と頼みます。理由を書かせるのが重要です。 理由の欄を見れば、仕分けが妥当かどうかを一目で確認できます。1つの記述が2つの箱にまたがる場合は両方に数えてよいと最初に伝えておきます。
件数だけでは足りません。「場所・設備が20件」と言われても、褒められているのか困られているのかが分かりません。箱ごとに、良い評価・困っている・要望の3区分で内訳を出させます。 件数が多くて「困っている」の比率が高い箱が、最優先です。
数字だけで終わらせないでください。要約せず、原文のまま代表的な記述を3〜5件、箱ごとに抜き出させます。「駐車場が狭い」より「2回まわって停められず、そのまま帰りました」のほうが、社内の誰が読んでも動く気になります。社内で共有するときに効くのは、いつも生の言葉のほうです。
「適当にカテゴリ分けして」ではなく、ステップ2で決めた5つの箱の名前をそのまま渡します。こちらが決めた枠に入れさせることで、月をまたいでも比較できます。
「意図を推測して」と頼むと、書かれていない内容が結果に混ざります。判断がつかない記述は「判断不能」として、理由と一緒に分けて出してくださいと最初に指示します。判断不能が10件あるなら、その10件だけ自分の目で見ればよいことになります。
集計が終わったら、全体の件数が元のデータの件数と合っているかを確認します。この確認を毎回入れるだけで、静かに件数が減っていく事故を防げます。
自由記述の欄は、半分近くが空欄か「特になし」です。これを母数に入れると、どの箱の比率も実態より低く見えます。 最初に除外し、除外した件数も記録しておきます。
長文で強い調子の記述が1件あると、それが全体の傾向のように見えてしまいます。必ず件数と並べて読むこと。 1件は1件です。
15個も箱をつくると、1つあたり1〜2件になり、傾向が見えなくなります。5つから始めて、必要になったら増やす。 最初から作り込まないほうが続きます。
「もっと種類があると嬉しい」と「頼んだものが違っていた」は、緊急度がまったく違います。前者は検討事項、後者は即対応です。同じ箱に入れても、区分は分けて数えてください。
一度きりの集計では、「多い・少ない」の基準がありません。2回目からが本番です。 同じ箱で3か月並べると、増えている箱と減っている箱がはっきり出ます。
| 業種 | 効きどころ |
|---|---|
| 美容室・治療院 | 施術内容と応対の評価を分けて追える。指名や再来の判断材料になる |
| 飲食店 | 味・提供時間・席まわりの3点が分離でき、どこから直すか決めやすい |
| 小売・通販 | 商品説明の不足と在庫切れの不満が数で見え、掲載内容の改善につながる |
| 教室・スクール | 講師別・クラス別に分けると、進度や説明の課題が具体的に出る |
| 士業・コンサルティング | 報告の分かりやすさと対応速度への評価が分かれ、業務の型づくりに使える |
| 宿泊・観光 | 設備と接遇が混ざりやすいので、箱を分けるだけで打ち手が変わる |
どの業種でも共通するのは、「うすうす感じていたこと」が件数として出た瞬間に社内が動き出すという点です。感覚のままだと反対意見が出ますが、数字になると議論の対象が変わります。
使えます。写真やスキャン画像から文字を読み取らせて、そこから仕分けに進めます。ただし読み取りの精度は文字の丁寧さに左右されるため、読み取り結果を一度目で確認する工程は残してください。
30件を超えたあたりから、箱ごとの傾向が見えてきます。10件程度なら自分で読んだほうが早いです。100件を超えると、手作業との差が決定的になります。
氏名など個人が特定できる欄は、渡す前に削ってください。自由記述の中に個人を特定できる内容が含まれることもあるので、気になる場合は伏せ字にしてから渡す運用にすると安全です。
100件の自由記述を読んで仕分けし、集計表にまとめる作業は、慣れた方でも2時間前後かかります。手順を整えておけば、確認の時間を含めて30分前後まで縮むケースが多いです。
アンケートの自由記述をまとめる作業について、この記事でお伝えしたことを整理します。
棚に置いたままのアンケート用紙は、実際にはすでに集めたのに使っていない資産です。集める手間はもう払い終わっています。あとは、読める形に変えるだけです。
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