「毎回おなじ注意書きを添えている」「担当者が変わったら出てくるものが変わった」。Claude Code をしばらく使っている会社から、いちばん多く出てくるのがこの2つです。原因はほとんどの場合、指示の出し方ではなく会社のルールがどこにも書かれていないことにあります。Anthropic公式のAIコーディングツール Claude Code には、作業を始めるたびに自動で読み込まれる「CLAUDE.md」というルールの置き場が用意されています。ここに社名の表記や禁止事項、成果物の書式を書いておけば、誰が指示を出しても同じ前提で作業が進みます。この記事では、何を書くべきか・書くと逆効果になるものは何か、そして無視されないルールの書き方までを、専門知識のない方にも分かる言葉で整理します。
Claude Code に作業を頼むとき、こんな一文を毎回添えていないでしょうか。
「社名は正式名称で書いてください」「金額は税込で統一してください」「顧客名は伏せ字にしてください」
これは指示ではなく会社の決まりごとです。決まりごとは、本来なら毎回伝えるものではありません。新しく入った社員に、朝礼のたびに「弊社は金額を税込表記します」と言い続ける会社はないはずです。一度どこかに書いて、それを読んでもらえば済みます。
ところが多くの現場では、この決まりごとが担当者の頭の中にしかありません。だから毎回打ち直すことになり、打ち忘れた回だけ違うものが出てきます。担当者が変われば当然、出てくるものも変わります。品質のばらつきは指示の巧拙ではなく、前提の置き場がないことから生まれているわけです。
Claude Code には、作業を始めるときに自動で読み込まれるファイルがあります。それが CLAUDE.md です。作業フォルダに置いておくだけで、以降のすべての指示にその内容が前提として効きます。
難しい設定は要りません。中身はただの文章で、箇条書きで構いません。プログラムでも設定ファイルでもなく、「うちの会社ではこうします」を書いた紙だと考えてください。
| 毎回指示に書く場合 | CLAUDE.md に書く場合 | |
|---|---|---|
| 手間 | 作業のたびに打ち直す | 一度書けば以降は不要 |
| 抜け漏れ | 打ち忘れた回だけ崩れる | 常に効く |
| 担当交代 | 引き継がれず品質が変わる | ファイルごと引き継がれる |
| ルール変更 | 全員に周知が必要 | 1か所を直せば全員に反映 |
効果がいちばん分かりやすいのは、担当が変わったときです。前任者の頭の中にあった決まりごとがファイルとして残っていれば、後任は初日から同じ品質で作業を進められます。属人化の解消という意味では、マニュアル整備よりも先に効く一手です。
目安として、A4で1枚に収まる分量から始めるのが現実的です。長ければ効くというものではなく、むしろ短く具体的なほうが確実に守られます。
実際にどう書けばよいのか、業種を問わず使える形で挙げます。そのまま写して、自社の事情に合わせて言葉を差し替えてください。
・当社の正式名称は「株式会社〇〇」。略称は社外向け文書では使わない
・金額はすべて税込で記載する
・日付は「2026年8月2日」の形式で書く
・顧客名は社外向け資料では「A社」「B社」と伏せる
・報告書は「結論・根拠・次の行動」の3見出しで構成する
・作成した資料は「案件名_日付」の形式で名前を付ける
・ファイルを削除・上書きする前は必ず確認を取る
・判断に迷ったら勝手に決めず、選択肢を出して確認を求める
8行です。これだけでも、毎回打ち直していた注意書きのほとんどが不要になります。最初から完璧を目指す必要はありません。「またこれを打っているな」と気づいた指示を、その都度1行ずつ足していくだけで、1か月もあれば実用的な分量になります。
会社全体で共通のルールと、案件ごとに違うルールは分けて置けます。
| 階層 | 置き場 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 全社共通 | 個人の設定フォルダ | 社名表記、金額の書式、禁止事項など、どの案件でも変わらないもの |
| 案件・部署別 | その案件の作業フォルダ | この顧客だけの呼称、この案件だけの提出形式、担当者名など |
両方が置かれている場合、案件側のルールが優先されます。「全社では税込表記だが、この顧客だけは税別で出す」といった例外を、全社ルールを崩さずに扱えるということです。
最初から2階層で組む必要はありません。まず作業フォルダに1つ置いて運用し、「これはどの案件でも同じだ」と分かったものを全社側に移す。この順番のほうが、実態に合ったルールになります。
数ページにわたる長文になると、重要な項目が埋もれます。守ってほしい順に並べ替え、優先度の低い項目は思い切って削るほうが、結果として守られる率は上がります。
「読みやすく書く」は守りようがありません。「1段落は3文以内」「見出しは必ず付ける」のように、守れたかどうかを後から判定できる形に直します。曖昧な努力目標を具体的な条件に書き換えるだけで、効き方が変わります。
作業しているフォルダと、ファイルを置いたフォルダがずれていると、当然読み込まれません。「ルールを書いたのに効かない」という相談の多くは、この単純な取り違えです。まず置き場所を確認してください。
Claude Code には、決めごとを登録する仕組みが複数あります。混同すると「どこに書けばいいのか分からない」状態になるので、役割を整理しておきます。
| 仕組み | 役割 | たとえるなら |
|---|---|---|
| CLAUDE.md | 常に効いている前提・禁止事項・書式 | 就業規則 |
| スキル | 特定業務の手順をまとめたもの | 業務マニュアル |
| スラッシュコマンド | よく使う作業の呼び出し | 作業指示書のショートカット |
判断基準はシンプルです。「どの作業でも守ってほしいこと」は CLAUDE.md、「この作業のやり方」はスキル。金額を税込で書くのはどの業務でも同じなので CLAUDE.md、月次報告書の作り方はその業務固有なのでスキル、という切り分けになります。
順番としては、CLAUDE.md を先に整えるのが正解です。土台となる前提がない状態で個別の手順だけ増やすと、手順書ごとに同じ注意書きを書き足すことになり、結局は元の問題に戻ります。
4手順目まで進めて、はじめて「会社のルール」になります。ここまでやらないと、結局は誰かの個人メモのまま終わります。
専門知識がなくても書けますか。
書けます。中身はただの日本語の箇条書きで、書式の決まりもありません。社内向けの注意書きをそのまま写す感覚で始められます。
どのくらいの分量が適切ですか。
A4で1枚程度が目安です。数ページに膨らむと重要な項目が埋もれ、守られにくくなります。増やすより、優先度の低い行を削るほうが効果的です。
書いたルールが守られないことはありますか。
あります。多くは分量が多すぎるか、書き方が曖昧か、置き場所が違うかのいずれかです。この3点を確認すればたいてい解決します。
顧客ごとに違うルールがある場合はどうしますか。
案件ごとの作業フォルダに、その案件用のルールを置いてください。全社共通のルールと両方が効き、案件側が優先されます。
秘密情報は書いてもよいですか。
書かないでください。「顧客名は社外向け資料では伏せる」というルールは書いても、実際の顧客名や認証情報は書き込まない、という線引きが必要です。
Claude Code に毎回同じ注意書きを添えているなら、それは指示ではなく会社のルールです。ルールは頭の中ではなく、読み込まれる場所に置く。それだけで、打ち忘れによるばらつきも、担当交代による品質の変化もなくなります。
始め方は簡単です。今週書いた指示を見返して、繰り返していた一文を3行だけ書き出す。それを作業フォルダに置く。守られなかった行を具体的に書き直す。更新の担当を1人決める。この4つで、頭の中にあった決まりごとが会社の資産に変わります。
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